東京地方裁判所 昭和28年(ワ)1195号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実と判断〕参加人は、原告から本件建物を買い受けて、昭和二八年五月一五日売買予約による所有権移転請求権保全の仮登記をし、次いで昭和二九年二月三日その本登記として所有権移転登記を経たが、被告は本件建物について何の権限もないのに、被告のため昭和二六年四月一八日売買予約による所有権移転請求権保全の仮登記並びに賃借権設定の登記がなされており、参加人の建物所有権に妨害を加えているとして、右各登記の抹消を求めた。被告は、被告のための右両登記については有効な登記原因があることを抗弁したほか、参加人のした本件建物の所有権移転登記は、当時原告が既に本件建物の売買契約を締結していた訴外渡辺実業株式会社に登記済権利証を交付してしまつた後で、その手中になかつたため、不動産登記法四四条所定の保証書によつて手続をしたのであるが、同条に所謂登記済証の滅失とは物理的消滅のみを意味するのであるから、参加人の右保証書による登記は無効である、と抗弁した。
右の点について判決は次のように判示して抗弁を排斥した。曰く、「被告は参加人の前記所有権移転登記は不動産登記法第四四条に違背する無効な登記である旨主張するが、同法条に所謂登記済証の滅失とは、物理的消滅のみを意味するものではなく、紛失のため一時所在の判明しない場合は勿論、所在が判明していても登記義務者の手裡に存在せずして、これを取戻すことが一般取引通念上殆んど不可能と認められるような場合をも包含するものと解すべきところ、……を綜合すれば、前記登記手続当時本件建物の登記済権利証は売主たる原告の手を離れ訴外渡辺実業株式会社を経由して被告の手中に移つており、これを取戻すことは至難な状態にあつたことを認めることができるから、保証書によつて前記登記手続を了したとしても、手続上何等の瑕疵なくもとより有効の登記たるを失わない。」